騎乗 2013.3.3発行J庭ひなまつり企画ペーパーSS

騎乗

 三月末、弥尋は新婚旅行として初の海外旅行を経験した。
 行き先はアメリカ。結婚してアメリカに住む三木の妹の芽衣子が所持する別荘の一つで、二人でのんびり過ごすのが目的だった。たまに子供たちを連れた芽衣子がやって来て、子供たちをけし掛け、弥尋を独占しようとしたりして三木が不機嫌になることもあったが、人生で初の海外旅行は誰に気兼ねすることもなく過ごすことが出来、楽しい思い出もたくさん出来た。
 何しろ、ボストンの郊外にある大きな公園ほどの敷地がコルワース家の私有地だというのにまずは驚かされ、乗馬が出来る個人宅というものに圧倒された。
 その肝心の乗馬に関しては、馬に乗ることからしてまず困難を極めるものだった。
 馬は多分、よくやってくれていたのだと思う。
 一般の初心者の三倍以上の時間を掛けて、よじよじと背に上った弥尋にも耐えたし、運動神経に心もとない騎乗者のために、ゆっくりと揺らさないよう、慎重に歩こうとしていたのかもしれない。
 しかし、歩こうとするたびに背中から悲鳴が上がっては、足を動かすことなど出来はしない。
 かつては競馬場で活躍し、引退後をオーナーのコルワース家に引き取られた彼――エディ=バーナー五世は、つぶらな瞳で訴えた。
 ――俺には無理だ……。
 果たして、彼の心の声、訴えが届いたのかどうか。それとも弥尋のあまりの狼狽ぶりに無理だと判断したからなのか、三木が手助けすることによって、なんとか弥尋は「乗馬気分」を味わうことが出来た。
 自力で乗れなかったのは屈辱ではあったが、弥尋とて自分の運動音痴ぶりは自覚している。気を遣って乗せてくれている馬に感謝し、暖かな目で見守ってくれていた三木や周囲に感謝しながらの馬上から見た景色は、大いに感動するものであった。
「すごい!」
 歩くたびに体が上下に揺れることに慣れることはなかったが、個人邸宅とは思えないほどの広大な敷地の中、緑の葉を付ける前の落葉樹の木立の間にいれば、どこか自分が他の世界に来た気分になってしまう。
 騎乗していた時間はそう長いものではなかったが、弥尋には十分な感動を与えるものだった。
「ありがとう」
 そうしてお礼にと角砂糖を掌に乗せて馬の前に差し出し、ぺろりと舐められて小さく驚きながらも、近づいて来た顔をそっと撫でた。
 よく手入れされた嘗ての名馬の栗毛は天鵞絨の手触りで、思っていたよりも大きな馬という生き物を最初は怖がっていた弥尋も、すっかり好きになってしまった。
 馬に乗るのは練習を積んでも絶対無理だと周囲が判断した結果、その後の滞在中、弥尋が馬に乗ることはなかったが、たびたび厩舎を訪れては馬の世話をしたり、撫でさせて貰ったりと貴重な経験が出来た。


 余談だが、初めての乗馬を経験したその夜、夜の生活でも騎乗位を求められた。
「弥尋君、今日の復習だ」
 寝転ぶ三木の上に跨って、熱い三木のものを中に挿れたまま胸の上に手をつく弥尋は、下から何度となく突き上げられ、涙目になっている。
「待って、隆嗣さん、ダメだっていきなり……んっ」
 夫の広い胸の上に手を付き、何とか動きに追いつこうと弥尋なりに頑張ってはいるのだが、中にある熱く猛った三木のものは的確に要所を突き、それだけでもういっぱいいっぱいなのだ。
「やっ……隆嗣さん、そんな、あっ……」
「弥尋君は乗馬の練習をしたいんだろう?」
「馬は僕の中に入らないよ。あん……馬に乗ってるより、隆嗣さんに乗ってる方がすごく揺れて感じるんだから。んっ……やだっ、なんでおっきくなるの!」
「それは弥尋君のせいだな」
 昼間以上に揺さぶられ運動させられたのは、最早言うまでもない。


2013.3.3発行ひなまつり企画ペーパーSS
at 2017-03-17-20:31 | SS ダーリン!