将軍様は発情中 2013.11.04発行J庭ペーパー裏面

将軍様は発情中

 黒に藍を流し込んだような色の艶やかな髪、前をしっかり見据える青い瞳は思慮深く、時には苛烈な色を見せ、人々の心を引きつける。国内で珍しい白い肌は、日に焼けて薄らとした色を付けているくらいだが、なよなよとしたひ弱な印象はどこにもない。引き締まった唇と凛々しい目元、男らしく精悍な端整な顔立ちに、目を潤ませ頬を染める女たちは多い。
 引き締まった均整な肉体は、閨の行為の激しさと熱情を期待させるに十分。
 閨では一体どんな声で囁いてくれるのだろうか? 
 剣を扱うあの手は、どんな風に肌を愛撫してくれるのだろう。
 ウェルナード=ヒュルケン将軍に関する巷での評判は大体そんなものだ。そして今、将軍の愛情を一身に引き受ける少年だけが、閨での将軍を知る唯一の証人となるのだが――。


「ベルさんっ、今度はなに? 何してるの?」
「蜂蜜」
「蜂蜜?! なんでそんなものを持ってるの!?」
「パリッシュに用意して貰った」
「ええーっ? パリッシュさんがそんなもの渡すはずないじゃないですか。なんて言って貰ったんですか?」
「食べ物に塗るのが欲しいって言ったら、バターと蜂蜜と果物のどれがいいかって訊かれたから、フィリオの好きな蜂蜜にした。駄目?」
「…いや駄目っていうか、駄目でしょ」
「でも、フィリオの肌に塗るとおいしそう。ほら」
「あんっ……やあぁっ……いきなりはやだ……っ」
「綺麗だ、フィリオ。フィリオの肌の上に金色の蜂蜜がつやつやしながら伸びて、きらきら光って見える」
「こんな時だけ口数多くなくていいから……っ、あ、やっ、やだそこっ!」
「幹は塗らない。先だけにする」
「先だけでも……っ! 舐めた? 今、ベルさん、僕の先っぽ舐めたの? 蜂蜜と一緒に!?」
「舐めるために塗ったから当然。フィリオの味が混じってる」
「…………もうね、黙って」


「おいフィリオ、あいつの寝技はどうだ? うまくやっていけそうか? 技量を教えてやるわけにはいかないが、それ以外では俺も協力するぞ」
「……黙秘権を行使します。たとえインベルグ王子の頼みでも、国王様命令でも口外しません」 


2013.11.04発行ペーパー裏面
at 2017-03-17-20:27 | SS 将軍様

将軍様は仕事中 2013.3.3発行J庭ひなまつり企画ペーパーSS

将軍様は仕事中

「右二番」
「右側の後方二番隊! 動きが遅い! 迅速に移動しろ!」
「槍の先」
「尖兵隊! 自分の武器の手入れを怠るな! 刃先が掛けているものは今すぐ研ぎに行け!」
「交代して展開」
「第三歩兵隊は第六歩兵隊と交代、扇形陣形を素早く取れ」
「――遅い」
「はっ! 貴様らッ! 訓練と思って侮るな! さっさと足を動かせ! 手を振れ! 目は敵から離すな! ダラダラしてると敵に命を持って行かれるぞ! 不甲斐ないお前らに、将軍は呆れていらっしゃる。本気でやれ!」


「――相変わらずだな、ここの演習は」
「前に出て指示を出してるのは副将の方ですよね?ベルさんが直接指示することはないんですか?」
「いや、戦の時には結構出してるぞ。いちいち通訳間に挟んでたら、それこそ敵にやられちまうからな。いつもはもっと喋ってるんだが、確かに今日は少ないな」
「ベルさん、緊張してるみたいですよ。すごく緊張してそわそわしてる」
「あ? 奴が緊張? あー、なるほどお前がいるからか」
「僕がいて邪魔なら帰った方がいいですよね? 申し訳ありませんけどインベルグ王子、この籠をベルさんに渡していただけますか? ご飯持って来たんです」
「まあそれが無難だろうが――おい、待て。やつが凄い勢いでこっちに走って来る」
「あ、ベルさん。え?帰るなって? でも僕がいたらベルさん落ち着かないでしょう? ちゃんと仕事してくれるならまだいるけど。するの? もっと厳しく真剣にするって? わかった。お邪魔にならないならここでベルさんのかっこいいところ見て行くよ」
「――こいつは一言も喋ってないのになぜわかる?」
「顔見ればわかりますよ、ねえベルさん」



2013.3.3発行ひなまつり企画ペーパーSS
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